繕いの工程


基本的に、ボディを成形し、表面を整えて絵漆を塗り、金粉を蒔くわけですが、その場合や用途により、粉や仕上げ方法が変わります。
下はシンプルな割れとホツが三カ所ある江戸後期の御深井の小皿の修理工程です。



修理する箇所をよく検討して、観察する。直す順番を考える。


糊漆で接着、成形



研いで金を蒔き、完成。


李朝初期白磁盃のにゅう(ひび)の修理
(銀直し)

※基本的には生漆を使っての修理も合成漆を使っての修理も時間が経てば経つほど固くなり、丈夫になります。できあがってすぐ使うよりも、1〜2年ほど待ったほうがより長く使えるでしょう。
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磁器の仕上げ


磁器の疵、特にニュウ(ひび)は、特に線の細さに拘ります。繊細で緊張感のある流れるような線を書くことにより、磁器の持つ雰囲気と馴染むのです。

李朝染付「祭」字面取台皿(銀直し)







協力:八王子・古民芸 百代様


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金直しの仕事と材料



金直しとは、陶磁器が割れた、欠けたなどを繕う一つの工芸の技法を応用したものです。
茶の湯では、傷のあるものを大切にして、景色としてたのしむといったことが流行したこともあり、一つの地位ができたように思いますが、あくまでも金直しは漆工芸の脇役的な仕事です。
漆という材料が、陶磁器と相性が良く、自然界で一番の接着剤として今日にも応用されています。
時代とともに、化学的な優れた材料も開発される中、「漆」が今日に使われているのは、化学的な材料に負けない特徴、風合いを備えているからです。
時代とともに、そこに米などの成分を混合する糊漆、漆に色をつけるために、顔料を混合したりと時代とともに工夫もなされ、今日に至ります。
よって、時代とともに、材料も工夫されていくことは決して悪いことではありません。古来からのやり方、あらゆる材料で試した上で、新しい材料を使ったほうが良いものと悪いものを判断することはとても大切です。
素材に適した材料で美しく繕うことがこの仕事の目的だと思っております。
漆カブレについて

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カシュー漆(教室で使用)


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漆かぶれについて


漆カブレを防ぐには直に触らないのが一番の予防法(手術用のゴム手袋などを用いる)ですが、触ってしまってもすぐに洗浄(シンナーなどで拭き、洗う)すれば、症状を防げます。しかし、付いてある程度の時間が経って仕舞うと、その後に洗浄しても漆の成分が体の中に入り込んでしまっています。
漆は、漆そのものが毒素をもっているのではなく、ウルシオールという漆の中の成分が体内に入り込むと漆カブレを起こしますのでスグに反応するのではなく、一晩〜数日して浸透してしまった箇所に水泡ができて痒くなります。症状がでてしまったら、洗ってももう手遅れで皮膚科の医師の相談に行かれることをお薦めします。症状には個人差があり、皮膚の弱い方などはかなり大きなカブレになるようです。
そのときに触った箇所を中心に痒くなり、かきむしるとあちこちに水疱が広がります。広がる前に医師の相談なり、ご自分にあった軟膏でかゆみをとめることが大切です。


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カシュー系の漆について


教室で使用している漆に替わるものとして、カシュー系のものを使っています。
まず、工芸のご経験のない方でも手軽に使える材料を使いこなし、慣れて戴くことが大切です。
手軽な陶磁器を直すのには、扱いやすくとても便利です。
カシューナッツの油から採れるもので、完全に硬化すれば、食器などに使用しても問題なく使えるうえ、10年〜15年持つといいます。
漆と違い、温度と乾燥度で硬化するため、通常に置いておくだけで良いし、揃える道具が最小限で済みます。
硬化の仕方や、工夫については、教室でより詳しくご案内しております。
生漆での方法との違いや、材料の使い分け方など合わせて解説しています。

参考までに、塗料の耐久度は以下の通り。

   ◇ ラッカー系塗料  1〜 2年
   ◇ 車の塗装など   5〜 7年
   ◇ カシュー漆    10〜15年
   ◇ 生漆        300年
 
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傷ものの選び方


最初に直すものは簡単な小さい傷のものが良いでしょう。それからだんだん大きな欠損のものなどを手がけると良いと思います。金直しはやっつけ仕事のような手っ取り早いものではありませんので、小さな傷でもじっくり腰を据えて直してあげてください。
練習用に傷のものを購入するときには、御自身でできる範囲のもので直しても美しい景色となるものを求められることをお薦めいたします。


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美しく仕上げるコツ


骨董がお好きな方で、本やスクール、教室などでご自分で金直しをしてみて、どうも上手く行かない方も多いかもしれません。練習やウデも必要だとは思いますが、道具がきちんと使いこなせていないと綺麗な直しはできません。それはどんな材料を使う場合も同じです。その本、スクール、教室などでそれぞれのやり方があると思いますが、道具を衛生的に正しく使うこと、作業の一つ一つに妥協をしないことが美しく仕上がるコツです。

焦らず、ゆっくり直すことも大事なことです。
最初に緊張感のある器から直すことをオススメします。


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直したものの扱い


直して仕上がったものは通常の食卓などで問題なく使用することができます。
しかし、直した材料から考えて、直した部分に負担をかけない手入れが必要となります。
よく、食洗機は使えますか?あるいは電子レンジはどうでしょうか?などと質問をうけますが、とんでもないことです。食洗機は高熱のお湯で食器を洗浄しますし、電子レンジは光るものに反応します。それぞれトラブルの原因となりますので、避けてください。
洗浄するときも、漂白剤やたわしなどを使ったり、鋭利なものでこすったりしますと、剥がれ、欠損の原因となりますので御注意ください。通常に漆製品を扱うのと同じと考えていただければよろしいかと思います。
今の食卓と、古来の食卓の習慣の違いをご理解ください。


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私の目指す金直し


私の目指す金直しとは、伝統技法を今日に用い、古陶磁などの本来持っている美しさを損なわない素直な直しを目指しております。金直しが主役となるでなく、そのもの全体のバランスを考えた直しができるよう、日々努力いたしております。

※修理は骨董店からの依頼のみとさせていただいておりますので、ご了承ください。

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